こころ・短歌『プリズム』vol.1

メンタルケアの当事者、家族、経験者によるネットプリント『プリズム』のvol.1について、はじめて読んだときからずっと感想を書きたいとおもっていて、しかしうまく言葉が浮かばず、現在進行形で、どういうふうに書けばより伝わりやすいのだろうということを…

leave me tender.

かなしいことは絶え間なく押し寄せて、そのたび呼吸ができなくてくるしくて、水面を見上げながらしずかに沈んでいっているようなそんな心地で、でも日々は流れていってわたしは、生きていて、生きて、生きているのだ。 なんとなくタバコをやめてみようかなと…

これから

短歌をつくるのも小説をかくのも写真を撮るのも、じぶんを満たしてあげたいという欲求からくるエネルギーなのだとおもった。電車に乗る。街に出る。はなやかで健全な生をいきているひとびととすれちがう。幾度も。そのうしろ姿をぼんやりと追ってしまう。あ…

沈殿と浮遊

「フラットな“無”ですね」とDr.が言って、それですねと私はかえした。月曜日のこと。 無と言われればなるほどたしかにそれである。そしてあたまは(ありがたいことに)ニュートラルでフラットだ。ばかなことをしない。極めて静かで、沈着で、無である。 なに…

テンダー

やがて熱はおさまり、しだいに冷えていく肌を持て余しながら、茫然と朝の光を浴びる。秋のものへと姿を変えたそれに身を浸して、こ洒落た流行りのミュージックなどを流し、ときおり、水たまりが波紋を拡げるように過去が存在感をしめしてくる。弱々しく、頼…

みどり

夜明けまえの覚醒が連れてきた心細さを、珈琲でもって咽に流しこむ。体の不具合さはあいかわらずで、布団を被ったていで額のまん中あたりはかすかに痛むよう。手持ち無沙汰にスマホを開いて鮮やかな世界を指でなぞれど、液晶に浮かび上がったキャラクタが右…

nikki;飽和する

私に関わった人みんな、なに一つかなしい目に遭わずやすらかに生きていってほしいと願う反面、なぜ私の周囲の人々はこんなにも皆自分勝手なのだろうかと、憤りで体の内側が爛れていくのを感じている。とはいえ、私の世界はごく 限られた空間でしかなく、その…

fiction/non-fiction

かなしいをかなしいと言ってしまえばそこですべてが完結してしまう気がして、すなおに「かなしい」をくちにすることが憚られた。それでも心を満たすのはかなしみにちがいなく、すこしでも吐き出したくて舌で転がし、唇に乗せてみる。言葉はするするとたやす…

nikki;悪い祈りとか

わりと長いこと、度の合わない眼鏡をつかっている。これで視力は0.7もないだろうから、車の運転はできない。寝間着で、くだんの眼鏡をかけて、豆乳を入れた珈琲を飲みながらキッチンとパソコンの前を往復している。起きてから3時間が経っていた。 おとついは…

すべて蒸発する心です。

いつかぜんぶが報われると信じてる、でも現実の窓の向こうは燦々とした日差しが容赦なくて、そのくせどこかから秋の匂いを連れてくるからたまらない。 私は私でありたいと願いつつ、子どもの万能感だけを引きずっておひるま、 冷えたレタスの葉を咀嚼、 ショ…

神さまください。

うたた寝のあいまにみた夢を、ぽつりぽつりと一人語る。脈絡もオチもないはなしを、枕は黙してきいてくれる。それが優しくて、だから甘えて、ぽつりぽつりと。晩夏の明けの、さえざえとした空気が肌をつつむ。わたくしの温度と呼吸と糸ほどの細さの声ばかり…

nikki;赤とみどり/2018.8.20

(手記・原文ママ) 経血の赤、女の証。すべてわたくしの体から出るもの。 不快だけれど仕方がないのだわとも思う。生きてるし。 言葉の、いっこいっこが離れていくから掴んでなンとか繋ぎとめんとがんばる。こっけいである。そんなことをしないと生きていか…

夏が溶けゆく

歪んでいく球形、生活のかたちをおしとどめるために、冷蔵庫で萎びていた豆苗を捨てた。いつ買ったのだかわからないえのきだけも。食べることのできなかった食材を生ごみとして破棄するのは、かろうじて保っている人間の姿を削っていっているようで、不快感…

お終いの土地

気を抜くと死んでしまいそうになる。泣き腫らしたまぶたは重く、鏡に映しだされた顔面に悲鳴を上げそうになった。醜く厚ぼったいそれは自然と下がってきてしまい、視界に不具合はないのだけれどどうにも、異和がある。 呼吸のできないほどのかなしみがマグマ…

沈殿/黙する

いにしえのブログぜんぶ消しちゃったし日記も引っ越しの際にすべて燃やしたから当時のじぶんが何を思い考えていたのかなにもかもを忘れてしまったけれど、あの時の感覚とか感触がふと甦ってきて茫然とする時がある。殺した気でいたけれど、死んでいなかった…

しにゆく

傷つけると知りながら、傷つけるようなことを言って、傷ついた顔を見て、傷つく、というのを、たぶん一生くりかえして死ぬ。 、 一秒一秒夏の死んでゆく様を、網戸越しのこちらから眺めている。氷を浮かべたアイス珈琲は苦くて飲んでいるとくちの中に膜の張…

私だけが知っていればいい地獄

まだ暗い、けれど朝と呼ばれる時間は静かに過ごせて好い。雨粒の弾ける音がする。鼻の奥を抜ける薄荷のにおい 。ひみつきち。積み本の中から引き抜いた一冊。ページをめくるゆびさきには淡い色。すきないろ。またたいて、きれい。 恋はするものじゃなくて落…

わたし達の共通項は孤独

性欲を孕んだ愛を根本的に信頼していないくせに一丁前に恋愛をしたがる。恋と愛に性欲は切り離せなくて、でもほんとうにそうなのかな、そんなものなくてもやってゆけるんじゃないかしら、とも思うから難儀だ。人生は難儀。けれどそうしているのはじぶんで。 …

深夜高速

午前四時のちょっと前に目が醒めてから、ひどくかなしい気持ちでいる。ぼんやりと音楽を流しながら、頭の芯に頼りなく靄がかかっているのを感じた。寝不足で迎える朝は心細い。へやは、けれど私一人きりで、誰に頼ることもできない。尤も誰かがいたとして、…

オアシス

不自然に生きているな、と、ふいに思った。とうとつに頭に浮かんだその感覚を、一人でひっ下げておくのはなおのこと不自然な気がしたのでしたためる。これといって意味はないのだけれど。へやは蒸していてひどく暑く、それでも椅子に坐った態で動くこともな…