わたし達の共通項は孤独

 性欲を孕んだ愛を根本的に信頼していないくせに一丁前に恋愛をしたがる。恋と愛に性欲は切り離せなくて、でもほんとうにそうなのかな、そんなものなくてもやってゆけるんじゃないかしら、とも思うから難儀だ。人生は難儀。けれどそうしているのはじぶんで。

 信じているのは家族や、数少ない友だちからの無償の愛だ。なにげない言葉や、ふとした時に送られてくるメッセージなど。みかえりを求めない愛にはみかえりを求めない愛を。注がれる愛情はいつしかコップからあふれそうで、あわてて容器の数を増やして対処する。受け容れられずにこぼしてきた愛が足もとに水たまりを作ってさみしそうにしている。何かのおりに水面がふるえる、波紋が拡がる、それを想い出と呼ぶことにして。

 なんにもいらないけど手を繋ぎたい、などと思う。傲慢と知りつつもいつかぜんぶが必要なくなるから、せめてその時まで生きること、が、わたし達の唯一の約束。死への希求が薄れた夜のわずかなすき間、薄荷のガムを久しぶりに噛んだ。